〜従来の禁忌からエビデンスに基づく実臨床へ〜
痛風発作時に尿酸低下薬は開始できるのか?
〜従来の禁忌からエビデンスに基づく実臨床へ〜
はじめに
薬局からの疑義照会でよく挙がる質問のひとつに、
「痛風発作中に尿酸低下薬を開始してはいけないのでは?」
というものがあります。
従来の教科書や一部ガイドラインでは「急性発作中の尿酸低下薬開始は避けるべき」と書かれていたため、現場でも「禁忌扱い」されがちでした。
しかし、近年のRCTやメタ解析では、抗炎症薬を併用すれば発作中に開始しても増悪しないことが示されています。
本記事では、このエビデンスを深掘りし、実臨床での位置づけを整理します。
従来の考え方:なぜ「禁忌」とされてきたのか?
- 発作時に急激な尿酸値変動が起こると、関節内の尿酸結晶が「再分布」し、炎症が悪化すると考えられてきた。
- 古い臨床経験的な報告では、「発作が長引いた」「痛みが強くなった」とされ、教育の場でも「発作中には絶対に始めない」と刷り込まれた。
- そのため薬局でも、処方を見て「これはダメなのでは?」と疑義照会につながるケースが今でもある。
最新エビデンス:RCT・メタ解析の結果
1. RCTの知見
複数のランダム化比較試験において:
- 発作時にアロプリノールやフェブキソスタットを開始しても、発作の期間や重症度に有意な差はない。
- ただし、コルヒチンやNSAIDsなどの抗炎症薬を併用していることが前提条件。
- これにより、痛みや腫脹の悪化リスクは統計的に否定された。
2. メタ解析の結果
- システマティックレビュー・メタ解析でも、発作中開始の安全性が支持された。
- 抗炎症薬を同時に用いれば、発作の延長リスクは上昇しない。
- むしろ「早めに尿酸値を安定化させる」ことのメリットが強調されるようになっている。
ガイドラインの動向
- 米国リウマチ学会(ACR 2020):発作時のULT開始を許容。ただし抗炎症薬併用を推奨。
- EULAR(欧州リウマチ学会):発作時開始も選択肢。ただし十分な抗炎症治療が行われていることが条件。
- 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン(2022年改訂):従来より慎重姿勢だが、最新エビデンスを踏まえて「発作中の開始も可能」と注記が増加。
つまり国際的には「禁忌」ではなくなりつつあり、実臨床でも徐々に浸透している状況です。
実臨床でのメリット
- 治療開始のタイミングを逃さない
→ 痛風患者は発作時に医療機関を受診しやすい。そのときに始めることでコンプライアンスが高まる。 - 長期的な尿酸コントロールが早期に安定
→ 生活指導だけで帰宅させてしまうと再受診率が低下する。 - 患者教育の契機になる
→ 「発作が治まったら…」と先延ばしするより、受診時に開始する方が理解を得やすい。
注意すべき実務ポイント
- 必ず抗炎症薬を併用する
- コルヒチン予防投与(0.5〜1 mg/日)
- NSAIDsまたはステロイド内服の併用
- 尿酸値を急激に下げない
- フェブキソスタット10〜20 mg、アロプリノール50〜100 mgから漸増。
- 薬局での対応
- 「発作中に開始してはいけないのでは?」と疑義照会が来ることは今もある。
- その際は最新エビデンスを踏まえて「抗炎症薬併用下なら安全」と説明できると理想的。
まとめ
- 従来は「痛風発作中の尿酸低下薬開始=禁忌」とされてきた。
- しかし RCT・メタ解析の結果、抗炎症薬を併用すれば安全 であることが示されている。
- 海外ガイドラインではすでに発作時の開始を許容。日本でも浸透しつつある。
- 依然として現場では「禁忌扱い」の認識が残っており、疑義照会が発生する。
- 薬剤師・医師ともに、最新エビデンスを共有し「患者にとって合理的な開始タイミング」を実現することが求められる。