手術前に服用を中止すべき薬剤について、このガイドでは、特に手術を控えた患者がどの薬を休止すべきか、そしてその理由について詳しく説明します。出血リスクや合併症を回避しましょう。
手術前に休止すべき薬剤の概要
手術前に医師から指示された薬の休止期間を守ることで、手術の成功率が向上し、術後の回復もスムーズに進むことが期待されます。ここでは、よく処方される薬剤の種類とその役割、そして手術前に休止する必要がある理由について説明します。
1. 抗血小板薬
抗血小板薬は、血小板が凝集するのを防ぎ、血栓の形成を抑える薬です。これにより、心血管系の健康を維持し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを減らす役割を果たしています。しかし、これらの薬は手術中や術後に出血しやすくなるリスクがあるため、手術前に中止する必要があります。
• 例: サルボグレラート(アンプラーグ®)、ジピリダモール(ペルサンチン®)、チクロピジン(パクリン®)、クロピドグレル(プラビックス®)
• 休薬期間: 1日から14日
• サルボグレラートは手術前に1日、クロピドグレルやチクロピジンは10日以上の休薬が推奨されています。
2. 抗凝固薬
抗凝固薬は、血液が凝固するのを防ぐ薬です。これにより、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)などの血栓性疾患を予防するのに役立ちます。しかし、手術中に過剰な出血を引き起こす可能性があるため、手術の数日前に服用を中止する必要があります。
• 例: ダビガトラン(プラザキサ®)、ワルファリン(ワーファリン®)、リバーロキサバン(イグザレルト®)
• 休薬期間: 1日から5日
• ダビガトランの場合、腎機能が低下している患者では2~4日休薬が推奨されます。
3. 骨粗鬆症治療薬
骨粗鬆症治療薬は、骨密度を高め、骨折リスクを軽減する薬です。これらの薬の中には、血液凝固に影響を与えるものがあり、手術中の血栓リスクを高める可能性があります。そのため、休薬期間を設けることが推奨されます。
• 例: ゾレドロン酸(ゾメタ®)、アレンドロン酸(ボナロン®)
• 休薬期間: 3日
• 骨粗鬆症治療薬は、特に大きな手術や全身麻酔が必要な手術の前には、3日間の休薬が一般的です。
4. 経口避妊薬
経口避妊薬は、女性が妊娠を防ぐために使用するホルモン薬です。しかし、これらの薬は血液凝固を促進し、手術中の血栓形成リスクを高める可能性があります。そのため、手術前に中止することが必要です。
• 例: レボノルゲストレル(ジェミーナ®)
• 休薬期間: 28日
• 長期的な手術予定がある場合、避妊薬は約1ヶ月前から中止することが望ましいです。
5. 降圧薬
降圧薬は高血圧を管理するために処方される薬ですが、手術中の血圧の変動に影響を与えることがあります。特に、手術中に低血圧を引き起こすリスクがあるため、医師の指示に従って一時的に休止することが求められます。
• 例: テルミサルタン(ミカルディス®)、エナラプリル(レニベース®)
• 休薬期間: 1日
• 降圧薬は手術の前日に休薬し、手術終了後に再開することが一般的です。
6. ビタミンK系経口尿酸降下薬
ビタミンK系薬剤は、手術中の出血リスクを高める可能性があるため、休薬が推奨されています。
• 例: メトホルミン(メトグルコ®)
• 休薬期間: 2日以上
• これらの薬は手術の数日前に休止し、術後の経過を見て再開します。
手術前に薬を中止する理由
薬を中止する主な理由は、出血のリスクを最小限に抑えるためです。特に抗血小板薬や抗凝固薬は、血液がサラサラになりすぎることで、手術中に出血が止まりにくくなる恐れがあります。これにより、手術の成功率が低下し、術後の回復にも悪影響を与える可能性があります。
休薬期間について
休薬期間は薬の種類や患者の状態によって異なります。例えば、抗血小板薬や抗凝固薬は、手術前に少なくとも数日間休薬が必要です。一方、降圧薬などは手術の直前に休薬し、術後すぐに再開する場合もあります。休薬期間については、必ず医師の指示に従い、自己判断で服用を中止したり再開したりしないようにしましょう。
まとめ
手術前には、服用している薬の中で休止が必要なものがあるかどうか、医師や薬剤師と相談することが大切です。適切な休薬期間を守ることで、手術中の出血リスクやその他の合併症を最小限に抑えることができ、安心して手術を受けることができます。